近藤式とは
近藤正二先生は、東北大学の名誉教授でした。
1937年から1972年までの35年間、
北は北海道の端から、南は沖縄の八重山群島に至るまで、
20kgを超えるリュックサックを背負い、
全国津々浦々の市町村990ヶ町村を訪ね歩き、
70歳以上の人が多くいる村を長寿村とし、
若死にが多く満70歳を超える人の少ない所を短命村とし、
その土地の人々の食生活の現地調査を行っておられました。
そのような比較をした結果、驚いた事に日本はヨーロッパの文明国と比較して、
70歳以上の人が半分しかいなかった事が分かったのです。
長寿村になるのも、短命村になるのも、一番の決め手になる原因は、
若い頃から、何十年という長い間、毎日続けてきた食生活にあります。
1975年の日本食が最も健康寿命を
延ばすという研究結果があります。
1975年の日本食の特徴は、
蛋白質や脂質を肉よりも魚から摂取し、
ワカメやヒジキなどの海藻を沢山摂取し、
食物繊維を多く摂取していた事です。
一汁三菜を基本的な配膳として、
主菜と副菜を合わせて3品以上が理想的です。
調理法は、煮る、蒸す、生食を優先し、
次いで、茹でる、焼く。
揚げる、炒めるは控えめにするべきです。
近藤正二先生によると、野菜のない所に長寿はないそうです。
中でも長寿に繋がる食品は、南瓜、人参、芋類、大豆などです。
反対に白米の偏食を伝統とする地域は短命なのだそうです。
日本の伝統的食生活を守り、長寿村として知られていたのが山梨県の棡原です。
棡原は、関東平野と甲州盆地を隔てる関東山地の中にある急峻な斜面に囲まれた村で、
水田はなく、村人は急勾配の土地に畑を耕し、雑穀や芋などを栽培して暮らしていました。
山間の僻地であるため、外界との交流は少なく、流通機関の無い時代には、
自給自足の粗食生活を守り、急斜面にある畑での過酷な労働にも耐えていました。
棡原の老人たちの主食は未精製雑穀や芋が中心です。
副食は煮物などの野菜が中心で、肉や魚はほとんど食べません。
あとは味噌汁に漬物、そのほとんどすべてがその季節、その近辺で採れたものばかりです。
厳しい生活環境にもかかわらず村人は、小柄でがっちりとした体格で、腰も曲がらず、
頭もよく働き、寝たきりになる事もなく、夫婦共々長寿を全うするのが普通でした。
そして、100歳近いお年寄りでも農作業に精を出しているのです。
棡原の村人の生活を微に入り細にわたって疫学調査した近藤正二先生は、
麦を中心とした粗食と重労働が長寿の元になっていると解析しました。
しかし、ここ数十年、交通網の発達により山村の棡原にも文明の波が押し寄せ、
現代食を摂るようになった若者を中心に急速に短命化が進んでいます。
沖縄本島の北部に位置する大宜味村は世界一の長寿村だと言われています。
1996年、WHO世界保健機関が大宜味村を世界一のご長寿地域に認定しました。
大宜味村の長寿の秘訣は食にあります。
大宜味村はシークヮーサーの生産量が日本一。その消費量も日本一です。
大宜味村の至る所で長命草、蓬、苦菜など、薬効成分の高い野草が手に入ります。
大宜味村では皆自分の畑を持っており、自給自足で無農薬の野菜を栽培しています。
この畑仕事こそが全身運動を兼ねていて、健康な体作りの基になっているのです。
台所と畑が隣り合わせなので、収穫してから食べるまでの時間が短く、
栄養価が最も高い状態で食べる事が長寿に繋がる大きな要因であると考えられます。
豚肉を食べる時は、脂肪を抜いた上で、頭から足の先まで無駄なく利用しているそうです。
大宜味村では、炒めた料理に豚の血を混ぜて食べる事もあるそうです。
豚の血は鉄分の宝庫で、貧血によく効くのだそうです。
琉球大学の研究では、大宜味村と本土の平均的な寿命の村を比較した結果、
血液検査では、アルブミンやヘモグロビン総コレステロールが大宜味村が良好な状態にありました。
大宜味村では、豆を平均的な村より1.5倍量摂取、緑黄色野菜は3倍量摂取しているそうです。
また、食塩の摂取量が日本で最も少ないそうです。
果物を野菜の代用品として考えている人は決して少なくありません。
果物はヴィタミンCに富み、生で食べられるので調理の加熱で損なわれる事なく摂れますから、
ヴィタミンCの摂取に限って言えば野菜より効率がいいかもしれません。
しかし、他のヴィタミン類、ミネラル類、繊維類では、野菜にかなり劣る事が多いのです。
果物をヴィタミンやミネラルの供給源として重視するのはあまり感心できません。
海藻を常食としてきた地域は、断然、脳卒中が少ないです。
海藻には、ヴィタミンKが豊富に含まれています。
ヴィタミンKは、肝臓、副腎、内皮の網状組織の機能を調整し、
有効な解毒剤と抗ヒスタミン剤の働きを持っています。
生活のために海に潜る漁夫や海女が丈夫で長生きなのは、
彼らが食べている海藻や小魚に起因します。
日本人は米だけを主食としてきた訳ではありません。
江戸時代中期まで米は取引専用商品のような扱いでした。
日本人は、米、麦、粟、稗、黍、豆、芋、蕎麦と多種類の穀物を主食にしてきたのです。
多種類の穀物の中から米だけを取り出して食べていれば、体は異常を来たすはずです。
白米を偏食する地域では、脳溢血で倒れる人が多いです。
現代医学で説明するなら、
精製炭水化物の大量摂取⇒血糖値の急上昇⇒インスリンの過剰分泌⇒動脈硬化⇒脳溢血
という事になります。
近藤正二先生がハワイを訪ねた時、不思議な現象の解明を依頼されました。
それは、現地の日系人一世たちが70代、80代でも元気なのに、
40代、50代の二世たちが親より先に早死にしているという現象でした。
そして、分かった事は一世たちは肉を少しは食べても野菜を沢山食べるのに、
二世たちはほとんど野菜を食べないという事でした。
一世は故国以来の日本型食生活だったのに、二世はすっかり食事を欧米化させ、
その結果として、心臓病、その他の欧米的な病気で早死にしていたのでした。
近藤正二先生は、自分が数十年かけて調べ上げた日本の長寿村、短命村の比較調査と合わせ、
ハワイの二世たちの実例も挙げて、本土の日本人にも食事の欧米化の危険性を警告しました。
日本の僻地にはサラリーマンはいませんでした。
大抵の人が、農業、漁業、林業などをしており、
男女共に定年なく動ける限り働いていました。
結果的に重労働をしている地域の方が
長寿である事が証明されました。
体が動く限り、仕事は続けた方が良いのです。
長寿村の食事
- 野菜
- 海藻
- 大豆
- 胡麻
- 小魚
- 低塩分
長寿村の共通の条件
- 水・空気の質がよい。
- 気候が厳しい。
- 労働がきつい。
- ストレスが少ない。
- 大食ができない。
- 美食ができない。
- 野菜の摂取量が多い。
短命村の食事
- 白米
- 魚の切り身
- 肉
短命村の共通の条件
- 水・空気の質が悪い。
- 気候、住環境がよい。
- 労働が少ない。
- ストレスが多い。
- 飽食をしている。
- 美食をしている。
- 肉食中心、野菜不足。
近藤式五項目
- 蛋白質は必要なだけは摂らなければならない。
- 動物性食品の過剰摂取は心臓病や若死にを招く。
- 芋類はカロリーの摂りすぎを防ぐ効果がある。
- 野菜は色々な種類なものを充分に摂る必要がある。
- 穀物も米偏重ではなく多種類の方がよい。
食事と労働の組み合わせで考えると、
美食と動かない事が一番短命に繋がるようです。
野菜、海藻、大豆を毎日食べて、よく動くという事が、
生活習慣病を防ぐ一番の方法なのです。