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朝食有害説

朝食抜き健康法

仏教の世界には
「朝は少食、昼は正食、夜は非食」
という言葉があります。

 

釈迦の言葉に、一日の食事を
朝=一、昼=二、夜=三の合計六と考えて、
これを三に減らす事が健康に繋がるという教えがあります。

 

ドイツには古くから次の諺があります。
「一日三食のうち二食は自分のため、一食は医者のため」

 

平安時代や鎌倉時代の貴族は一日二食だったため
江戸幕府が誕生するまでは
「一日二食は優雅、一日三食は野卑」
と言われていました。

 

日本で一日三食が一般的になったのは、
都市部では江戸時代中期以降、
農村部では明治時代以降です。

 

一日三食という食生活は200年にも満たない浅い習慣です。
人間の食生活が一日三食になったのは近年になってからで、
それまでは昼食と夕食の一日二食が主流でした。
人間にはもともと、朝食という習慣がなかったのです。
人間が朝食を摂るようになったきっかけは、
トーマス・エジソンが発明したトースターを売るために
販売業者が朝食必要論を提唱した事がきっかけであると言われています。

 

日本においても江戸時代中期までは原則として一日二食で、
一日三食になったのは元禄時代になってからです。
醸造酒の多量生産によって玄米を精製して白米にする事が一般に普及し、
一回の食事の栄養価が低下した事が大きな原因だと言われています。

 

1971年にカナダのブラウン博士が、
朝はモチリンという消化管ホルモンの分泌が増える事を発見しました。
モチリンの分泌が増えると、腸の蠕動運動が促進されます。
ところが、このモチリンは食事を摂ると分泌量が減ってしまうのです。
だから、モチリンの分泌が増える朝の時間帯は、
食事を摂らないのが正しい選択だという事です。

 

副腎皮質ホルモンの中のコルチゾールは、
グルカゴンやアドレナリンの作用を高めて、
肝臓での糖新生を促進して血糖値を上昇させます。
血中コルチゾール値が最も高い時間帯は朝です。
朝はコルチゾールの分泌量が多いので糖新生が活性化しています。
朝は何も食べなくても活動するための血糖値は確保されているのです。

 

朝起きて間もない臓器は日中の半分以下しか機能していません。
朝は胃腸がまだ充分に覚醒しておらず、
そこに食物を詰め込むと、
負担が大きくなりすぎて、
消化が充分になされない事があります。
太陽が中天に達するまでの時間は
老廃物を排出するのに適しているのです。
午前中は主に排泄器官が働く時間で、
夜寝ている間は排泄器官も休んでいます。
この排泄しなければならない朝の時間帯に食事を摂ると、
自動的に消化吸収が始まり、
胃や小腸に血液が集中するため、
毒素や老廃物の排泄が充分行えなくなってしまいます。

 

飢餓の歴史が長かった人間の生理作用には、
吸収は排泄を阻害するという鉄則があり、
食べ物が消化器官に入ってくると、
自動的に排泄よりも消化吸収を優先させるのです。
その結果、毒素の排泄は充分に行われなくなり、
血液中にも毒素が残る事になります。
その汚れた血液が体内を巡る事によって、
種々の病気の発症の引き金となるのです。

 

本来、空腹を感じるはずではないのに
空腹感がある事を偽腹と言います。
例えば、いつも朝食を抜く人が、
付き合いでたまたま朝食を摂ったとします。
すると、昼にはいつもより早く、しかも強く空腹を感じます。
これは、胃腸が荒れ、
胃腸の粘膜に傷が付いているために起こる現象です。
胃も腸も荒れているから、
脳が胃腸に騙されて、
空腹感が生じるのです。

 

実は、朝起きた時に空腹を感じるのも偽腹です。
いつもは夕食後に何も食べない人が、
夜遅い時間に何かを食べたとします。
すると、翌日の午前中は普段より空腹を感じるようになります。
偽の食欲はそのまま辛抱していると自然に消えます。

 

人間の体は不思議なもので、
食べるからお腹が空くのです。
半日断食して胃が治ってきたら、
たとえ朝食抜きでも空腹感はなくなります。

 

午前中の活動は、
前日の夜までに摂取した食事のエネルギーだけで充分間に合います。
夜は筋肉も休憩し、脳でのエネルギー消費も少なくなっていますから、
前日の夜までの食事のエネルギーは血液中にたっぷりあり、
余分な分はグリコーゲンや脂肪として蓄えられています。
血液中の栄養素が少なくなると、グリコーゲン、
次に脂肪がエネルギーとして使われるので、
朝食を抜いたくらいで体がエネルギー不足に陥る事はまずありません。

 

最も避けるべきなのは朝の加熱食です。
消化不良を起こして胃腸を腐敗させる原因となります。

 

朝食抜き生活を無理なく続けるには、
朝食で糖質を摂らない事が肝要です。
糖質を摂って血糖値が上がり、
インスリンの分泌が促進されると、
食後3〜4時間で反応性の低血糖に陥ってしまいます。
すると、また糖質が欲しくなります。
その食欲に従って糖質を摂ってしまうと、
結局3〜4時間経つ毎に糖質が欲しくなってしまいます。
この悪循環を断ち切るためにも、
一日のスタートである朝の時間帯には
インスリンを増やす糖質を摂らない事が望ましいのです。

 

朝食を摂らない人は二種類に分ける事ができます。
@健康のために敢えて朝食を摂らない人。
A毎晩夜更かしをして睡眠不足で朝食を摂る時間がない人。
この二者を同列で語るべきではありません。

 

朝食必要論者は、朝食を摂らない子供は朝食を摂る習慣がある子供よりも
学校の成績が悪いという疫学データを盾にしています。
しかし、朝食を摂らない習慣の子供は、
夕食を遅い時間に摂ったり、夜更かしをしたりと、
日常生活全般が乱れている傾向が顕著な事も明らかになっています。

 

TV番組などでは、朝食に関する実験がよく行われています。
朝食を摂った人と摂らない人の午前中の勉強や運動の能力を比較してみますと、
大抵は朝食を摂った人の方が成績優秀で、
それが朝食必要説の裏づけとなります。

 

しかし、この能力実験は条件の段階で既に公正であるとは言えません。
なぜなら、普段から朝食を摂る習慣がある人を実験の対象としているからです。
朝食の習慣がある人が朝食抜きの生活に慣れるには、
通常三週間程度はかかります。

 

公正な実験結果を得ようと思うのであれば、
朝食抜きの人の方は朝食を徐々に減らして、
朝食抜きの生活に慣れる時期を待ち、
その時点で、両者の能力の比較をするべきです。

 

また、普段から朝食を摂らない人に朝食を与えて、
その変化も調べるべきでしょう。
普段から朝食を摂らない人が朝食を摂ると、
勉強や運動の能力の低下が予想されます。

 

某大学で学生を対象に行った調査では、
朝食を抜いた学生は成績が悪かったという結果が得られています。
その理由として、同大学の教授は、
脳のエネルギー源であるブドウ糖が行き渡らないためだとしています。
ところが、ここには落とし穴があります。
同教授は著書でNHK番組『ためしてガッテン』で行った実験の結果を紹介しています。
この実験では、朝食を抜くグループは翌日の午前中にお腹が空くであろう事を考慮して、
前日の夜にバター入りラーメンを食べてもらい、エネルギーを補給してもらっていたのです。
学生たちはこってり脂の消化にエネルギーを取られて成績が上がらなかったのです。
つまり、「朝食抜きは頭に良くない」という結論を導くための作為的実験だったのです。


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