小林式とは
小林弘幸先生は、埼玉県出身の医学博士で、
順天堂大学医学部教授で、
日本体育協会公認スポーツドクターです。
自律神経研究の第一人者として、
数多くのアーティストやアスリートのコンディショニング、
パフォーマンス向上指導に携っておられます。
日本の平均寿命は
男女とも長野県が一位です。
沖縄県は女性が第三位です。
長寿県の共通項を調べてみると、
意外な事実が浮かび上がります。
長野県が長寿日本一になったのは、
食生活、自然環境、県民性など、
様々な説があるのですが、
最も有力な要因は気圧の低さです。
気圧の低い地域では、
副交感神経が優位になり、
ストレスが緩和されます。
長野県は全体的に高地なので、
ストレスに晒されない環境で
生活していると考えられます。
長寿県だった沖縄県は、
平均気温が高いので、
それに伴って体温が高くなり、
免疫力も向上します。
平均寿命の最下位は
男女共に青森県です。
気温が低い上に
気圧が高いのが
原因の一つとされています。
私たちの体は脳がコントロールしています。
しかし、脳が体のすべてをコントロールしている訳ではありません。
生命活動の維持という点において、
自律神経は脳と同じくらい重要な役割を担っています。
自律神経は内臓全体に分布していて、
分泌、循環、発汗、呼吸などに深く関わっており、
体温調節、エネルギー代謝、心臓を動かすなど、
自分で意識して動かす事のできない機能を制御しています。
自律神経は、交感神経と副交感神経の二種類に大別されます。
交感神経が優位になると体はアクティヴな状態になり、
副交感神経が優位になると体はリラックスした状態になります。
交感神経と副交感神経のバランスには日内変動があり、
朝から日中にかけては交感神経が優位に働き、
夕方から夜にかけては副交感神経が優位に働くというリズムがあります。
交感神経と副交感神経のどちらが
優位なのかを知る分かりやすい目安が体温です。
体温が高い時には交感神経が優位になり、
体温が低い時には副交感神経が優位になります。
16時前後は最も体温が高く、
交感神経がよく働いており、
運動に最も適した時間帯です。
交感神経を高める最大の要因は運動です。
副交感神経を高める最大の要因は睡眠です。
交感神経の働きを乱す最大の要因はストレスです。
副交感神経の働きを乱す最大の要因は過食です。
交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれています。
副交感神経は「休憩と食事の神経」と呼ばれています。
双方の働きは、
お互いを補佐するものではなく、
反対の方向に働きます。
健康な人が病気になる原因は、大きく分けて二つしかありません。
一つは免疫系のトラブル、もう一つは血管系のトラブルです。
この二つのトラブルはどちらも自律神経の働きと深く関わっています。
自律神経は細胞に指令を送る際、
神経の末端から神経伝達物質を分泌します。
交感神経はアドレナリンを分泌して体調を整えます。
副交感神経はアセチルコリンを分泌して体調を整えます。
免疫の中心を担っているのは血液中の白血球という成分です。
白血球には、細菌など比較的大きめな異物を処理する顆粒球と、
ウイルスなどそれよりも小さな異物を処理するリンパ球の二つがあります。
交感神経が優位になると顆粒球が増えます。
副交感神経が優位になるとリンパ球が増えます。
自律神経のバランスがよければ白血球のバランスもよくなりますが、
自律神経のバランスが崩れると白血球のバランスも崩れてしまうので、
免疫力が低下してしまいます。
脳梗塞や心筋梗塞は、
血栓という塊が血管の中にできる事が原因で起こる病気です。
血栓ができる最大の原因は、
血流が悪くなる事です。
血管の動きをコントロールしているのは自律神経です。
交感神経が働くと血管は収縮し、
副交感神経が働くと血管は弛緩します。
自律神経のバランスが崩れると、
血栓ができやすい体の状態になります。
体が最も良好な状態で機能するのは、
交感神経も副交感神経も両方高いレヴェルで活動している状態の時です。
人はどのような状態の時に病気になりやすいのでしょうか?
結論から申し上げますと、交感神経が過剰に緊張し、
副交感神経が極端に低下している時です。
この状態が持続すると、心身に様々な不調や症状が現れてきます。
副交感神経活動レヴェルが高くて、
交感神経活動レヴェルが低すぎる場合は、
鬱病の傾向にあると言えます。
交感神経も副交感神経も活動レヴェルが低い場合は、
疲れやすく、やる気も起きない状態で、
健康状態は良くも悪くもありません。
自律神経は気温の影響を受けます。
私たちの体は、夏は副交感神経が優位になりやすく、
冬は交感神経が優位になりやすい傾向にあります。
この変化には血流が関係しています。
秋から冬にかけて気温が下がっていくと、
寒さを感じた体は体温を上げるために血流を増やそうとして、
交感神経を優位にして血圧を上げます。
これが秋から冬へと季節が移り変わる頃に、
風邪やインフルエンザに罹る人が増える原因なのです。
寒いから風邪を引く訳ではありません。
寒いから風邪を引くのなら、
風邪を引く人の数が最も多い地方は北海道という事になりますが、
実際には、北海道も九州も風邪を引く人の数にほとんど差はありません。
風邪の原因は気温の低さではなく、気温の変化なのです。
秋から冬にかけては交感神経が優位になるので、
顆粒球は増えますが、リンパ球は減ります。
リンパ球の減少がウイルスや細菌への抵抗力を下げてしまうので、
風邪やインフルエンザなどの感染症に罹りやすくなります。
春になって暖かくなると、リンパ球が増えるので感染症は減りますが、
鬱病などメンタルな病気を患う人が増えます。
交感神経が過剰に優位になると感染症に罹りやすくなり、
副交感神経が過剰に優位になると鬱病を患いやすくなります。
現代の日本人の多くは、交感神経が高めの状態にあると言えます。
副交感神経が下がったままの状態で生活している人が圧倒的に多いのです。
交感神経が過剰に優位になる理由は
電磁波、情報過多、長時間労働など
至る所にありますが最大の原因は光る画面です。
PC、SPなどの発光体が脳の窓口である目を
興奮させてその興奮は必ず脳に伝わります。
脳は強い光に無条件に
興奮する特性を持っています。
コンヴィニエンスストアがやたら明るいのは
脳を興奮させて買い物額を増やすためです。
交感神経が過剰に優位になると
血管の内皮細胞を傷めてしまいます。
副交感神経が上がると血管が弛緩して広がり、
血流が改善されて隅々の細胞まで
血液が行き渡るようになります。
諸悪の根源は、血管の過剰な
収縮による血流の悪化です。
普段から副交感神経を高い状態で維持する事が、
心身の健康を保ち、体の潜在能力を最大限に引き出す鍵となります。
生活習慣や精神状態を意識的に整える事で、
下がり気味の副交感神経を上げる事ができます。
実際、一流の人たちの言動を見ていると、
結果的に副交感神経を上げる事を数多く行っている事が分かります。
自律神経のバランスがいい人は見た目も体の中も実年齢より若いと言えます。
自律神経をコントロールするポイントは「ゆっくり」です。
ゆっくり呼吸し、ゆっくり動き、ゆっくり生きる。
そうすると、下がり気味の
副交感神経活動レヴェルが上がり、
自律神経のバランスが整いはじめます。
自律神経のバランスが整えば、
体の免疫力も自然に向上します。
呼吸は意識して早くする事も
できれば遅くする事もできます。
一方、何も考えなくても呼吸はしています。
そのため呼吸は顕在意識と潜在意識を繋ぐものとして
洋の東西を問わず心の安定に役立てられてきました。
息を吸うと交感神経が緊張し、
息を吐くと副交感神経が緊張します。
従って、吸う息と吐く息の比率が
1対2の呼吸をするのが理想的です。
笑う、上を向く、水を一口飲むなども、
副交感神経を上げる有効な手段です。
口角を上げて笑顔を作るだけで副交感神経は上がります。
上を向くと気道が開きますから自然に呼吸が深くなって副交感神経は上がります。
水を飲むと胃・結腸反射が起きて胃腸の働きが良くなり副交感神経は上がります。
人間の体において最も重要なのは栄養の吸収です。
栄養の吸収には腸内細菌が必要不可欠なので、
腸内細菌のバランスが悪いと栄養の吸収が悪くなります。
栄養の吸収が悪くなると、
腸の中には吸収できなかった栄養分が残り、
その残った栄養分が腐敗していきます。
腐敗した栄養は毒素を出し、
その毒素が腸内細菌のバランスを悪化させ、
同時に血液を汚します。
血液が汚れると肝臓や心臓や腎臓などの臓器を傷つけ、
それらの臓器をコントロールしている自律神経のバランスをも崩してしまいます。
自律神経のバランスが崩れると、
末梢血管が傷つき、
全身の血流が悪くなります。
腸内細菌のバランスを良くする乳酸菌を
意識的に多く摂取して善玉菌を増やすと、
血液が綺麗になり、
自律神経のバランスが良くなり、
血流が改善され、
末梢まで綺麗な血液が行き届くようになり、
腸管での栄養吸収が良くなり、
肝臓や心臓や腎臓などの
臓器の状態も良くなります。
人間の健康を決めるのは血液の質であり、血流です。
血流をコントロールしているのは自律神経です。
血液の質を決める腸内細菌のバランスと、
血液を全身に巡らせる血流をコントロールしている自律神経のバランス、
この二つのバランスを同時に整える事が健康を維持する最良の方法なのです。
交感神経と副交感神経の働き
交感神経 | 副交感神経 | |
---|---|---|
目 | 瞳孔が拡大。 | 瞳孔が縮小。 |
心臓 | 鼓動を促進。 | 鼓動を抑制。 |
血行 | 悪い。 | 良い。 |
血圧 | 上げる。 | 下げる。 |
血管 | 収縮。 | 弛緩。 |
胃 | 消化を抑制。 | 消化を促進。 |
腸 | 消化を抑制。 | 消化を促進。 |
呼吸 | 浅い。 | 深い。 |
活性酸素 | 多い。 | 少ない。 |
心身の状態 | 興奮、緊張、闘争。 | リラックス、休息。 |
分泌する神経伝達物質 | アドレナリン、
ノルアドレナリン。 |
アセチルコリン。 |
自律神経の四つのパターン
@ | 交感神経も副交感神経も高い。 | 潜在能力を最大限に発揮できる。 |
---|---|---|
A | 交感神経が高く、副交感神経が低い。 | 感染症に罹りやすい。 |
B | 交感神経が低く、副交感神経が高い。 | 鬱病の傾向にある。 |
C | 交感神経も副交感神経も低い。 | 疲れやすく体力もない。 |
自律神経を整えて腸内環境を改善する簡単な方法
- 起床したら朝陽を浴びて交感神経優位な状況に切り替える。
- 朝一番にコップ一杯の水を飲む。
- 食前にコップ一杯の水を飲む。
- 乳酸菌、オリゴ糖、食物繊維を摂る。
- 少量の食事をできるだけゆっくり時間をかけて摂る。
- 夕食は就寝三時間前には済ませる。
- ぬるめのお風呂で15分間の半身浴をして深部体温をゆっくり上げる。
- 腸の活動が最も活発になる24時には就寝して腸の蠕動運動を促進する。